vol.2 ベトナムLIFEな人たち 石田 安彦さん 〜日本人宿『兎家』はこうして生まれた – ホーチミンで人生を動かした旅人の決断〜

ベトナム移住|ベトナム 起業|ホーチミン 日本人 ホテル

 

「人生ってどう転ぶかわからんね」

 

そう語るのは、ホーチミン市で日本人宿「兎家」を営む石田安彦さん。宿のお客さんたちからは  “ヤスさん”  の愛称で親しまれています。

今回のインタビューでは、ヤスさんがどのようにしてベトナムにたどり着き、起業し、困難を乗り越えてきたのか。その飾らない言葉から、海外で生きること、働くことのリアルが見えてきました。

 

🚢初めての海外旅行で人生が変わった|バックパッカーに目覚めた20代の原点

 

ヤスさんが初めて海外に出たのは、今から約30年前、まだ20歳になったばかりのころ。

「当時はインターネットもなかったから、海外に行く方法は本で調べて。大阪から中国・上海までフェリーで行けるやんって、値段も安いし  “よし、行ってみよう!”  って。片道チケットだけで初めての海外一人旅。今考えたら普通にありえへん」

ひとり船に乗り込み、2泊3日の航海でたどり着いたのは、まだ発展途中の上海。朝早くから太極拳をする人々、人民服で自転車に乗る人、道端には半裸のおじさんが将棋を打っていて、ジュースを買ったらビニール袋に入って出てくる。すべてが新鮮で、刺激に満ちていたといいます。

「バックパッカー旅はまさにリアルRPGで、子供のころからずっとやってたドラクエなんかも全くやらなくなりました。世界を旅する方が何倍もおもろいのにゲームなんかやってる暇なんかないし。そこからはバイトして貯めたお金は全部旅行資金」

 

🌏ベトナムとの出会い|ホーチミン移住を決めたきっかけ

 

「いつかは海外で住んでみたいなぁって漠然とは思ってて。何人も友達がワーホリや青年海外協力隊で海外に行ってたけど、仕事あるし自分には無理やなって」

ところがJICAのホームページをちゃんと見てみると在職しながら海外青年協力隊に参加できるかもしれないことに気付いた。

「年齢的にも応募できるのもラスト。合格できるかどうかは別として、やるだけやってそこから考えようって思って試験を受けました」

結果、見事合格となり、マダガスカルに派遣内定が出たそうです。

「でもそこからがまた大変。職場の上司に話して、休職扱いにしてもらってJICAに派遣してもらえないか交渉しました」

ヤスさんの前職は地方公務員、役所勤めだったそうです。

「前例がないし、要綱から作らなあかんから難しいって言われて。ただ当時の上司はなんとかしてやろうって思ってくれて動いてくれてました。ほんと感謝です」

「ところが僕がマダガスカル行くって噂を聞きつけた知り合いから連絡があって。ベトナム来ない?駐在員探してるんだけどどう?って」

そうして、初めて住むことになったのがベトナム・ホーチミン。旅でハノイを訪れたことはあったものの、ホーチミンはまったくの未知の街。初めて降り立った空港で感じたのは、バイクの多さと熱気でした。

「もうバイクだらけで、ハノイより都会で人多いし。バイク多すぎて道も渡れへん。こんなとこで絶対住まれへんわ!って思ったのが第一印象。めっちゃ考えたけど、ま、せっかくやし行ってみっかってホーチミンに来ました」

 

💬「また戻ってきてよ!」の一言が人生を動かした|ホーチミンで起業を決意するまで

 

ホーチミンで駐在員として1年間働いたあと、一度は日本に帰国。

「日本帰ってからなにしよかなって思ってて、まあ今しか長い旅できんかなって思って、行きたい国をいくつか、半年くらい旅しました。その時にホーチミンにもまた来て、当時の部下だったベトナム人スタッフと飲みに行ったんですけど。その時にまたホーチミン戻ってきて一緒に働こうよって言われて」

その “また戻ってきてよ” の言葉が、人生を大きく動かします。

「そう言ってくれた元部下に、どうせやるなら宿屋がしたい、会社作りから手伝ってもらわんといかんけど、ほんまにできる?って聞いたんです。そしたらやるって。ここでやらんかったらもう宿屋なんてできひんなって」

 

🏠ゲストハウス開業ストーリー|予約ゼロから始まった「兎家」の挑戦

 

2017年3月末に再びホーチミンへ。物件探しから始まり、やっと見つけた理想の建物。5月にはホームページを立ち上げ、同年8月に「兎家」をオープンさせました。

…が、甘くはなかった。

「ホームページを立ち上げて1ヶ月経っても2ヶ月経っても予約も問い合わせも全然ない。当時はSEO対策もわかってないし、どないしたもんかと…」

それからポツポツと予約が入り始めたものの、大学生の夏休みが終わった10月以降はまた閑古鳥。

「当時はオンシーズンもオフシーズンもわかってなかって、なんで10月なったらこんなに人来んのやろ?なんか起こってんのちゃうか?って。宿泊者ゼロの日が何日もあって、一人ででっかい宿(兎家)に寝てて。なにやってんやろって思ってました」

 

兎家が面する路地。ブイビエン通りから近いところにある。

 

💔コロナ禍で宿泊客ゼロに|それでも続けられた理由と支えてくれた人たち

 

起業から2年半ほど経ち、やっと軌道に乗り始めたとき――コロナのパンデミックが直撃。

「宿って旅行者がおって初めて成り立つでしょ。コロナで飛行機飛ばんくなったら誰もベトナムに来られへん。どうしたらええんやろって思って。でも個人がどうやってもコロナが無くなったり、飛行機飛んだりせんし。頭おかしなってたかもしれんですね」

でも、そんな中でもヤスさんは宿を閉めるという選択はしませんでした。

「せっかくここまで作ったのに、閉めるのはもったいない。まあ2~3カ月で元通りなるやろって思ってましたね。けど、そこから2年も店閉めるとは思ってへんかったね」

救いになったのは、ホーチミン在住の日本人やベトナム人の友人たちがマンスリー契約で住んでくれたこと。

「ホーチミンに住んでる友達にうちに引っ越してきてもらうことできん?って聞いて無理言って頼んで。オーナーさんには家賃交渉してコロナ収まるまで家賃まけてもらったりして。当然黒字になんかならんけど、少しでも赤字を減らすように考えて」

 

🌟 ホーチミンの日本人宿「兎家」|宿のこだわりとリピーターに愛される魅力とは

 

いまや「兎家」は、ホーチミンでも人気の宿のひとつ。
その特徴は、何といっても  “広くて快適なドミトリーベッド”  。

「シングルベッドって、横幅が90cm。ベッドの中にバックパックは入れられないし大きい人は寝返りもできない。でも兎家はセミダブル(120cm)で、それだけあればかなり広い。各ベッドにバックパックが丸ごと入るセキュリティボックスや折り畳みのテーブルもついていて、カーテン閉めればほぼ個室です」

4人部屋、6人部屋、14人部屋と種類も豊富。もちろん個室もあり、ダブルやツインも用意されています。

「いろんな人が泊まってくれるのが嬉しい。学生さんもいれば、有給使って遊びに来る社会人、年金貰ってるくらいの年配の方もいるし。パスポート無くした方が駆け込んできたり、お金を盗まれて困って相談しに来る人もいてる。そういうときこそ、助けられる宿でありたいと思っています」

 

ドミトリーベッド。ゆったりとしたベッドスペースにセキュリティボックスとテーブル付き

 

ダブルやツインもあります

 

😊ベトナムでの暮らし|ホーチミンで感じる日常の幸せと人とのつながり

 

「普段はほぼずっと宿にいます(笑)」

とはいえ、ただ宿の中にこもっているわけではありません。宿泊客の皆さんと一緒に食事に行ったり、時には近くのカフェでのんびりしたり。仕事の合間に見せるヤスさんの笑顔は、とても穏やかです。

「日本にいた頃は海とか山とかアウトドア好きだったんですけど、ホーチミンにいてるとそんなん全然むり。でも、それでも毎日が充実してるなって思います」

 

スアちゃんが迎えてくれます

 

🇻🇳ヤスさんが語るベトナムの魅力|治安・物価・気候だけじゃないホーチミンの良さ

 

「気候がずっと暖かいし、雨季はあってもすぐに止むし、物価も安い。治安も悪くないし、日本からも近い。すごく暮らしやすいですよ」

ホーチミンでおすすめのスポットを聞くと、こんな答えが返ってきました。

「定番のベンタイン市場とか統一会堂とかはとりあえず見といて、穴場だとサイゴン川の水上バスはおすすめ。チョロン(中華街)は日本の中華街のイメージとは違うのでしっかり予習してからがいいです。夜はやっぱりブイビエン通りですね。夜9時以降に行ってください」

 

✈️海外移住を考えているあなたへ|ホーチミンでの起業から学んだことと伝えたい想い

 

「僕も最初は  “とりあえず行ってみよう”  やったんです。あんまり考えんでもなんとかなるんで、そんなに構えなくても案外いける。そりゃもちろん予習はしといた方がいいけど、なんだかんだでなんとかなる」

今後は、新しい事業にもチャレンジしてみたいと語るヤスさん。

「ベトナムでもいいし、日本でもいい。やりたいことはいっぱいあります。いくつになってもやれんことなんかないですよ」

ホーチミンの街角で、 “ただいま”  と帰ってくる旅人を笑顔で迎えるヤスさん。気取らず、自然体で迎えてくれるその姿に、安心感を覚えます。

 

兎家 Hotel & Guesthouse
ホームページ

*兎家ではゲストハウスのお手伝いをして頂けるボランティアスタッフを募集中。
宿のお仕事に興味がある方、ベトナムにプチ移住してみたい方などのご連絡をお待ちしています🐇🇻🇳
詳細はこちら

 

このインタビューは、現地で活躍する日本人のリアルな声を通じて、ベトナムでの暮らしや働き方を身近に感じてもらうことを目的としています。

 

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取材日 2025年5月22日

【執筆・撮影】岡部 祐樹|当サイトStep Jobs代表
ホーチミン在住10年以上。
ベトナムで働く日本人やベトナム人に向けた人材コンサルティング会社「Step Jobs」を経営。
現地で見つけたリアルな暮らしや街の魅力をスナップコラムで発信しています。

当ホームページではベトナムでの日本人向けのお仕事の掲載もしております。
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